EA(自動売買)を探していると、
- 「28通貨ペア対応!」
- 「主要通貨すべてで運用可能」
- 「1つのEAで分散投資」
といったアピールを見かけることがあります。
これを見ると、「対応通貨が多いほど優秀なEAなのでは?」と思ってしまいますよね。
しかし、EAを実際に開発してきた立場から言うと、通貨ペアは多ければ良いというものではありません。
むしろ、無理に通貨ペアを増やした結果、本来の強みが失われてしまうEAも少なくありません。
EA-Labではこれまで凜・AXIS・GENESISの3本を開発してきましたが、実際に何百回、何千回とバックテストやフォワードテストを繰り返す中で、「通貨ペアは厳選した方が長期的には安定する」という考えに変わっていきました。
今回は、1通貨運用と複数通貨運用、それぞれのメリット・デメリットを、実際の開発経験を交えながら解説します。
通貨ペアを増やすメリット
まずは、複数通貨で運用するメリットから見ていきましょう。
一見すると「対応通貨が多い=高性能」に思えますが、実際にメリットも存在します。
取引チャンスが増える
もっとも分かりやすいメリットは取引回数が増えることです。
例えばEURUSD専用EAの場合、その日の相場状況によってはまったくエントリーしない日もあります。
しかし、
- EURUSD
- USDJPY
- GBPUSD
- AUDUSD
など複数の通貨で同じロジックが使えるなら、それだけエントリーチャンスは増えます。
つまり、
- 資金が遊ぶ時間が減る
- 利益を狙える機会が増える
というメリットがあります。
もちろん、エントリー回数が増えれば利益も増える可能性がありますが、同時に負ける回数も増えるため、「回数が多い=優秀」というわけではありません。
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相場環境の影響を受けにくくなる
相場には、その時々で特徴があります。
例えば、
- EURUSDはレンジ相場
- GBPUSDはトレンド相場
ということも珍しくありません。
1通貨だけで運用していると、その通貨が苦手な相場になった瞬間に利益が伸びなくなります。
一方で複数通貨を運用していると、
- EURUSDは休憩
- GBPUSDで利益
- AUDUSDも利益
というように、別の通貨がカバーしてくれるケースがあります。
これが一般的に言われる分散効果です。
フォワード検証が進みやすい
EAを評価するには、ある程度の取引回数が必要です。
年間30回しかエントリーしないEAよりも、年間300回エントリーするEAの方が、ロジックの良し悪しを判断しやすくなります。
複数通貨で動かせば、
- エントリー数
- 勝率
- 最大ドローダウン
- プロフィットファクター
などのデータも短期間で集まりやすくなります。
EA開発者にとっても、これは大きなメリットです。
では、なぜEA-Labは通貨を増やさなかったのか
ここからが、他のまとめ記事にはあまり書かれていない部分です。
実は、EA-Labも最初は「対応通貨は多い方が売れるのでは?」と考えていました。
実際、凜・AXIS・GENESISの開発中にも、同じロジックをさまざまな通貨へ適用して検証しています。
しかし、その結果は想像していたものとは違いました。
例えばEURUSDでは右肩上がりの損益曲線になっても、
- USDJPYでは横ばい
- GBPUSDではドローダウンが大きい
- AUDUSDでは利益がほとんど残らない
ということが非常によくありました。
「ロジックは同じなのだから、どの通貨でも似たような結果になるだろう。」開発を始めた頃はそう思っていました。
しかし実際には、通貨ペアごとに相場のクセがまったく違うのです。
通貨にはそれぞれ性格がある
人にも性格があるように、通貨ペアにも特徴があります。
例えば、
- EURUSDは比較的素直な値動き
- GBPUSDはボラティリティが大きい
- USDJPYは日本時間に動きやすい場面が多い
- **XAUUSD(ゴールド)**は値動きが非常に激しい
同じ「移動平均線を使ったロジック」でも、通貨が変われば結果は大きく変わります。
つまり、ロジックに向いている通貨と、向いていない通貨が必ず存在するということです。
これはバックテストを繰り返していると、本当によく分かります。
むしろ、どの通貨でも同じように勝てるロジックの方が珍しいと言えるでしょう。
開発者が一番怖いのは「通貨を増やすための最適化」
EA開発を始めると、多くの人が経験するのが「最適化地獄」です。
例えば、「GBPUSDだけ成績が悪い。」となると、
- RSIの期間を変える
- 損切り幅を変える
- 利確幅を変える
- エントリー条件を変える
といった調整を始めます。
すると、その通貨だけは非常にきれいなバックテストになります。
しかし、ここで一歩立ち止まって考える必要があります。
その成績は、本当に将来も再現されるのでしょうか。
私は何度もこの壁にぶつかりました。
バックテストだけを見れば「勝てるEA」は簡単に作れます。
ですが、それは過去の相場に合わせ込んだだけのEAになってしまう危険性があります。
だからこそEA-Labでは、「対応通貨を増やすこと」よりも、「長く安定して動くこと」を優先して開発を進めています。
複数通貨運用にも大きなデメリットがある
ここまで読むと、「やはり複数通貨の方が良さそう」と感じるかもしれません。
しかし、実運用ではメリットだけではありません。
相関を考えないと分散にならない
初心者の方がよく勘違いするのが、「通貨を増やせばリスク分散になる」という考えです。
実際には、同じような動きをする通貨ペアを増やしても、本当の意味で分散にはなりません。
例えば、
- EURUSD
- GBPUSD
は、似た方向へ動く場面も少なくありません。
そのため、同じロジックで同時にエントリーすると、勝つ時は一緒に勝ちますが、負ける時も一緒に負けます。
つまり、ドローダウンも一緒に大きくなる可能性があります。
特に重要指標や要人発言のタイミングでは、この傾向が顕著になります。
そのため、「複数通貨=安全」と考えるのは少し危険です。
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管理するものが増える
通貨が増えるほど、
- バックテスト
- フォワード結果
- スプレッド
- 約定状況
など、確認する項目も増えていきます。
EA初心者であればあるほど、まずは1通貨でEAの特徴を理解する方が、運用は安定しやすいでしょう。
1通貨運用がおすすめな人
次のような方は、1通貨運用から始めることをおすすめします。
- EA初心者
- 少額資金で始めたい
- EAの動きをしっかり理解したい
- リスク管理を重視したい
1通貨なら、「なぜここでエントリーしたのか」「なぜここで負けたのか」を確認しやすく、EAへの理解も深まります。
また、トラブルが発生した際にも原因を特定しやすいというメリットがあります。
複数通貨運用がおすすめな人
一方で、
- 十分な運用資金がある
- EAのロジックを理解している
- 相関関係も考慮できる
- 長期運用を前提としている
という方であれば、複数通貨運用も有効です。
ただし、重要なのは、「対応しているから使う」のではなく、「検証して問題なかったから使う」という考え方です。
複数EA運用についても詳しく解説している記事があるのでこちらも参考にしてみてください。
EA-Labが最終的に1通貨重視になった理由
凜・AXIS・GENESISを開発していて、一番感じたのは、「勝てる通貨だけに集中した方が、結果的に安定する」ということでした。
もちろん、対応通貨を増やそうと思えば増やせます。
実際にバックテストでも試しました。
しかし、無理に対応通貨を増やすよりも、得意な通貨で長期間安定して利益を積み重ねる方が、運用するユーザーにとって価値があると考えました。
EAは「対応通貨数」を競うものではありません。
どれだけ長く安心して運用できるかが、本当に大切なポイントだと思っています。
まとめ
EAは通貨ペアを増やせば必ず利益が増えるわけではありません。
確かに、
- エントリーチャンスが増える
- 分散効果が期待できる
といったメリットはあります。
しかし、その一方で、
- 相関による同時損失
- ドローダウンの拡大
- ロジックとの相性
といった問題もあります。
私自身、3本のEAを開発する中で、「通貨数を増やすこと」を目指すのではなく、「そのロジックに最適な通貨で勝負すること」が最終的には最も安定した結果につながると実感しました。
EAを選ぶ際は、対応通貨の数だけで判断するのではなく、「なぜその通貨で運用しているのか」という開発者の考え方まで確認してみることをおすすめします。
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