「バックテストでは良い結果だったのに、実際に運用してみると思ったより利益が少ない」
この原因の一つとして見落とされがちなのがスワップコストです。
スプレッドはEA運用のコストとして比較的認識されていますが、スワップについては「よくわからない」「あまり気にしていない」という人が多いです。しかし長期保有型のEAや、特定の通貨ペアでは、スワップがパフォーマンスに大きな影響を与えることがあります。
EA-LabでGENESIS・凜・AXISを開発・運用してきた中で、スワップとどう向き合ってきたかを整理します。
スワップとは何か
スワップ(スワップポイント)とは、FXのポジションを翌日に持ち越したときに発生する金利の受け払いのことです。
FXは2つの通貨を交換する取引です。例えばUSDJPYを買うということは、円を売ってドルを買うことを意味します。このとき2つの通貨の金利差が「スワップ」として毎日精算されます。
金利の高い通貨を買って金利の低い通貨を売っている場合はスワップを受け取れます(プラススワップ)。逆の場合はスワップを支払います(マイナススワップ)。
EAの場合、ポジションを自動で保有し続けるため、日をまたぐたびにスワップが発生します。1回あたりの金額は小さくても、積み重なると無視できないコストになります。
スワップがEA運用に与える影響
スワップの影響が大きくなるのは主に以下のケースです。
①ポジション保有時間が長いEA
エントリーから決済まで数時間で完結するEAは、日をまたがないためスワップが発生しないケースが多いです。しかし数日〜数週間ポジションを保有するスイングトレード系のEAは、スワップが積み上がります。
GENESISのBOXブレイクアウト型は、エントリー後にトレンドが継続する方向にポジションを保有する設計です。ポジション保有時間が長くなる局面では、スワップの影響が出ます。
②マイナススワップが大きい通貨ペアを使うEA
通貨ペアによってスワップの金額は大きく異なります。また同じ通貨ペアでも買いと売りでスワップの方向が変わります。
例えばUSDJPYは日米金利差の影響を受けます。米国の金利が高い局面ではUSDJPYの買いポジションでプラスのスワップを受け取れますが、売りポジションではマイナスになります。金利環境が変わるとスワップの方向や金額も変わります。
③ブローカーによってスワップが異なる
同じ通貨ペアでも、ブローカーによってスワップの金額は異なります。バックテストで使ったスワップ設定と実際のブローカーのスワップが乖離していると、実運用の成績がバックテストより悪くなります。
バックテストではスワップをどう扱うか
MT5のストラテジーテスターでは、バックテスト時にスワップを考慮した設定が可能です。
しかしここに落とし穴があります。バックテストで使用するスワップの値は固定値です。実際のスワップは金利環境によって変動するため、バックテストの固定スワップ設定と実運用のスワップが乖離する可能性があります。
特に2022年以降のような急激な利上げ局面では、スワップが大きく変動しました。この変動はバックテストには反映されていません。
EA-Labの開発でも、バックテストとフォワードの乖離の原因を探る際に、スワップの影響を確認するプロセスを入れています。スプレッドと同様に、スワップもバックテストの精度を下げる要因の一つとして意識する必要があります。
バックテストと実運用が乖離する原因についてはこちらで詳しく解説しています。
通貨ペア別のスワップの特性
EAで使う通貨ペアによって、スワップへの対応が変わります。
GBPUSD(GENESISが採用)
GBPUSDは英ポンドと米ドルの金利差でスワップが決まります。英国と米国の金利政策に敏感に反応します。GENESISはM15で比較的短い時間軸での取引が中心ですが、ポジションが日をまたぐ場合はスワップが発生します。ブローカーによってGBPUSDのスワップ設定は異なるため、実際に使用するブローカーのスワップを確認することが重要です。
USDJPY(凜が採用)
USDJPYは日米金利差が直接スワップに反映されます。2022〜2024年のような米国高金利・日本低金利の局面では、USDJPY買いポジションにプラスのスワップが発生します。凜はアノマリー型で特定時間帯に絞ったトレードをしているため、ポジション保有時間は比較的短いです。ただし方向によってスワップの受け払いが変わることは意識しておく必要があります。
EURUSD(AXISが採用)
EURUSDはユーロと米ドルの金利差でスワップが決まります。ECB(欧州中央銀行)とFRBの政策金利の差がスワップに反映されます。AXISはトレンドフォロー型でポジションを保有する時間が長くなることがあるため、スワップの影響が3つのEAの中では最も大きくなりやすい特性があります。
XAUUSDを使う場合の注意点
ゴールド(XAUUSDやGOLDとも表記)はFX通貨ペアと比べてスワップが特殊です。ゴールドはそれ自体が資産であるため、通貨の金利差ではなく保管コスト的な概念でスワップが設定されることが多く、多くのブローカーでマイナススワップになります。ゴールド専用EAを検討する場合は、スワップコストを必ず事前に確認してください。
スワップをEA設計に組み込む考え方
スワップへの対応として、EA設計段階でできることがあります。
①ポジション保有時間を意識した設計にする
スワップが大きくマイナスになる局面を避けるために、ポジション保有時間に上限を設ける設計があります。一定時間内に決済されない場合は強制決済するという条件を入れることで、スワップコストの積み上がりを防げます。ただしこの設計はTPに届く前に決済されるケースが増えるため、PFとのバランスが必要です。
②売買方向ごとのスワップ差を考慮する
特定の通貨ペアで売りポジションのスワップが極端にマイナスになる場合、売りエントリーの頻度を減らすフィルターを入れることも選択肢の一つです。ただしこれもロジックの複雑化につながるため、慎重に判断する必要があります。
③ブローカー選びでスワップを考慮する
同じEAでもブローカーによってスワップが異なるため、スワップが有利なブローカーを選ぶことも重要です。特に長期保有型のEAを使う場合、ブローカーのスワップ設定の確認は必須です。
ブローカー選びの考え方についてはこちらで解説しています。
スワップとスプレッドの違い
よく混同されるスワップとスプレッドの違いを整理します。
スプレッドはエントリー・決済のたびに発生するコストです。取引頻度が高いほど影響が大きくなります。スキャルピング系・高頻度系EAで特に重要な指標です。
スワップはポジションを翌日に持ち越したときに発生するコストまたは収益です。ポジション保有時間が長いほど影響が大きくなります。スイングトレード系・長期保有型EAで特に意識すべき指標です。
EA-LabのGENESIS・凜・AXISはいずれもM5・M15での運用で、スキャルピングほど高頻度ではないため、スプレッドとスワップの両方をバランスよく意識しています。
スプレッドのEA運用への影響についてはこちらで詳しく解説しています。
まとめ
スワップはEA運用において見落とされがちなコストですが、特に長期保有型のEAや特定の通貨ペアでは無視できない影響があります。
EA-Lab的なスワップへの対応は以下の通りです。バックテスト時にスワップ設定を確認し実運用ブローカーのスワップと比較する。ポジション保有時間が長くなるEAはスワップの影響を意識した設計にする。ブローカーによってスワップが異なるため実際の使用ブローカーで確認する。
スワップは見えにくいコストですが、長期運用では積み重なります。バックテストとフォワードの乖離を最小化するためにも、スワップへの理解と対応は重要な要素です。