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EAは「勝率が高い=良いEA」ではない|凜の勝率79%が示す本当の意味

「勝率が高いEAの方が安心できる」

EA選びをしている人の多くが、最初にそう考えます。勝率80%と聞けば良さそうに見えるし、勝率40%と聞けば不安になる。この感覚は自然なものですが、EA運用においては勝率だけで良し悪しを判断するのは危険です。

EA-Labが開発した凜は、10年バックテストで勝率79.16%という数値を出しています。一見すると「高勝率の優秀なEA」に見えますが、この数値が何を意味しているのかを正しく理解しないと、EA選びで失敗します。

この記事では、勝率という指標の本質と、高勝率EAが必ずしも良いEAではない理由を開発者目線で解説します。

勝率だけでは収益性はわからない

まず根本的な話をします。

勝率はトレードの「勝ち負けの比率」を示すだけで、収益性を示す指標ではありません。

極端な例で考えます。

  • 勝率90% / 平均利益10pips / 平均損失100pips
  • 勝率40% / 平均利益100pips / 平均損失30pips

前者は10回トレードすると9勝1敗。しかし1回の負けで100pips失い、9回の勝ちで90pipsしか得られない。つまり毎回少しずつ損をしていることになります。

後者は10回トレードすると4勝6敗。しかし4回の勝ちで400pips得て、6回の負けで180pips失う。差し引き220pipsのプラスです。

勝率が高い方が負けているという逆転が起きます。収益性を正しく判断するには勝率だけでなく、勝ったときの利益と負けたときの損失の比率を合わせて見る必要があります。これがプロフィットファクター(PF)です。

PFと勝率の関係

PFは「総利益÷総損失」で計算される指標です。

PFが1.0であれば利益と損失がトントン、1.2であれば1の損失に対して1.2の利益が出ている状態です。EAの収益性を判断するにはPFを見ることが基本になります。

勝率とPFの関係を整理すると、以下のようになります。

  • 高勝率・低RR比 → 勝率は高いがPFが低くなりやすい
  • 低勝率・高RR比 → 勝率は低いがPFが高くなりやすい

どちらが良いという話ではなく、勝率はPFとセットで見て初めて意味を持つということです。

GENESISの勝率は69.99%です。凜の79.16%より低い数値ですが、GENESISのPFは1.17、凜のPFは1.47です。勝率が低くてもPFで優位性が確認できていれば、それは機能しているEAです。

凜の勝率79%が意味すること

凜はアノマリー型のEAです。特定の時間帯・曜日に発生する相場の統計的な傾向を利用してエントリーします。

この設計において勝率が高くなる理由は明確です。

アノマリーは「その時間帯にこの方向に動きやすい」という統計的な偏りを利用します。偏りが明確であれば、エントリー方向が正しい確率が高くなります。これが高勝率につながります。

ただし、アノマリーを利用するトレードはその性質上、1回あたりの利益幅がある程度限定されます。「大きく利益を伸ばす」よりも「高い確率で小さく取る」という構造です。だから勝率が高くなる一方で、1回あたりの利益がそれほど大きくないという特性があります。

凜のPF1.47は、この構造の中で優位性が出ている結果です。勝率79%という数値は「凜のロジックが相場の構造に合っている」ことの表れであり、「勝率が高いから良いEA」という話とは本質的に異なります。

凜の開発で直面した勝率とPFのトレードオフ

凜の開発過程で、勝率とPFのバランス調整は繰り返し行いました。

アノマリーのエントリー条件を厳しくすると勝率は上がります。しかし条件が厳しくなるほど取引回数が減り、統計的な信頼性が下がります。逆に条件を緩めると取引回数は増えますが、アノマリーの優位性が薄まって勝率とPFが低下します。

また、祝日前の相場挙動への対策として「祝日前倒しトレード」というロジックを試したことがあります。祝日当日はトレードせず、前日に前倒しエントリーするという内容でした。バックテスト上では一部の局面で勝率改善が見られましたが、全体としては明確な改善がなく、ロジックの複雑化と過剰最適化リスクが高まるという問題が出たため不採用にしました。

この経験から得た教訓は、勝率を上げることを目的にしてはいけないということです。勝率はロジックの結果として出てくる数値であり、勝率を上げるために条件を追加すると、たいてい別の指標が悪化します。

高勝率EAへの注意点

EA販売サイトでは「勝率90%以上」を売りにしているEAを見かけることがあります。この数値を見たときに確認すべきことがあります。

①PFはいくつか

勝率が高くてもPFが1.0に近い場合、利益と損失がほぼ相殺されている状態です。手数料やスプレッドを考慮すると実質マイナスになる可能性もあります。

②SLを極端に大きくしていないか

勝率を上げる簡単な方法の一つが、SLを極端に大きくするか設定しないことです。SLがなければ相場が戻るまで待てるので勝率は上がります。しかし一度大きく動いた場合に壊滅的な損失が発生します。いわゆる「コツコツドカン」のパターンです。

③取引回数は十分か

取引回数が少ない場合、勝率の信頼性が低下します。10回のトレードで9勝しても、それは統計的に意味のある勝率とは言えません。最低でも数百回以上のサンプルが必要です。凜の10年バックテストでの取引数は451回です。アノマリー型の低頻度EAとしては適切なサンプル数と判断しています。

④フォワードでも同様の勝率が出ているか

バックテストで高勝率でもフォワードで崩れる場合、過剰最適化の可能性が高いです。バックテストとフォワードの勝率の乖離が大きいEAは注意が必要です。

EAを評価するときに見るべき指標の優先順位

EA-Lab的なEA評価の優先順位を整理すると以下の通りです。

まず最初に確認するのはPFです。収益性の基本指標であり、1.2以上を目安にしています。次に最大ドローダウンです。資金管理に直結するため、10%未満を基準にしています。そして取引回数です。統計的信頼性を担保するために必要な水準かどうかを確認します。最後に勝率です。PF・DD・取引回数を確認した上で、ロジックの性質と合致しているかを見る補助指標として使います。

勝率は最後に見る指標です。最初に勝率で判断するのではなく、PFと最大DDを先に確認することがEA選びの基本です。

最大ドローダウンの考え方についてはこちらで詳しく解説しています。

プロフィットファクターの正しい見方はこちらを参考にしてください。

まとめ

勝率はEAの良し悪しを判断する指標ではありません。

凜の勝率79.16%はアノマリー型ロジックの性質から自然に導き出された数値であり、「勝率を上げることを目指した結果」ではありません。重要なのはその勝率がPFとセットで意味をなしているかどうかです。

EAを選ぶときも、EAを評価するときも、勝率だけで判断するのをやめることが最初の一歩です。PF・最大DD・取引回数の3つをセットで確認した上で、勝率がロジックの性質と合致しているかを最後に見る。この順番を守るだけで、EA選びの失敗は大きく減ります。

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