EAを評価するとき、多くの人はPFと最大DDを見ます。
しかしこの2つだけでは見えない重要な情報があります。
「そのEAはDDから、どれだけ効率よく回復できるか」
これを測る指標がリカバリーファクターです。
EA-LabではGENESIS・凜・AXISのバックテストを確認するとき、PF・DD・取引回数に加えてリカバリーファクターも確認しています。この指標を加えることで、EAの「回復力」という視点が加わり、長期運用への適性をより正確に評価できるからです。
この記事では、リカバリーファクターとは何か、なぜEA評価に使うべきかを開発経験をもとに解説します。
リカバリーファクターとは何か
リカバリーファクターとは「純利益 ÷ 最大ドローダウン」で計算される指標です。
計算式はシンプルです。
リカバリーファクター = 純利益 ÷ 最大ドローダウン(金額)
例えば純利益が100万円・最大DDが20万円のEAであれば、リカバリーファクターは100÷20=5.0になります。
リカバリーファクターが高いほど、最大DDに対して大きな利益を生み出せているEAということになります。
つまり「DDを経験したとしても、それを取り返して余りある利益を出せているか」を数値化したものです。
PFとDDだけでは見えない「回復力」
PFとDDは重要な指標です。しかしこの2つには見えないことがあります。
具体例で説明します。
EA-Aのケース 純利益50万円・最大DD10万円・PF1.3
EA-Bのケース 純利益20万円・最大DD10万円・PF1.3
PFと最大DDだけ見ると、この2本は最大DDが同じでPFも同じです。しかしリカバリーファクターは全く異なります。
EA-Aは50÷10=5.0、EA-Bは20÷10=2.0です。
同じDDリスクを取りながら、EA-Aの方が2.5倍の利益を生み出しています。
この違いはPFとDDだけでは見えません。リカバリーファクターを加えることで初めて見えてきます。
MT5のバックテストでリカバリーファクターを確認する方法
MT5のストラテジーテスターでバックテストを実行すると、結果画面(バックテストタブ)に「リカバリファクター」として表示されます。
先日解説したストラテジーテスターの記事にも、GENESISのバックテスト結果のスクショで「リカバリファクター:4.92」という数値が表示されていました。
これがGENESISの10年バックテストでのリカバリーファクターです。
MT5のストラテジーテスターの使い方はこちらで解説しています。
リカバリーファクターの目安
リカバリーファクターの一般的な目安はこうです。
3.0未満:DDに対してリターンが不十分。長期運用には不安が残る水準。
3.0〜5.0:許容範囲。DDに見合ったリターンが出ている。
5.0以上:優秀。DDに対して効率よく利益を生み出している。
ただしリカバリーファクターが異常に高い(10.0以上など)場合は過剰最適化の可能性があります。バックテスト期間が短い・取引数が少ない・パラメータを最適化しすぎているケースでは、リカバリーファクターが実態より高く出やすいです。
EA-LabのGENESIS・凜・AXISの10年バックテストでのリカバリーファクターはこうなっています。
GENESISは4.92・凜はPF1.47・DD7.20%という特性からGENESISより高い水準・AXISはトレンドフォロー型の特性からやや変動しやすい傾向があります。
これらはあくまでバックテスト上の数値です。フォワードではバックテストより低くなることを想定した上で評価しています。
GENESIS開発でリカバリーファクターに気づいた場面
GENESIS開発の中盤、PFとDDのバランスを追いかけながら改良を続けていた時期がありました。
あるバージョンでPFが上がったものの、DDも大きくなるという問題が発生しました。PFだけ見ると改善に見えますが、DDが大きくなっていては長期運用への適性が下がります。
このとき初めてリカバリーファクターを意識的に確認しました。
PFが上がってもDDが大きくなったバージョンは、リカバリーファクターがむしろ下がっていました。利益の増加よりDDの増加の方が大きかったからです。
リカバリーファクターを見ることで「PFが上がった改良が本当に良い改良だったのか」を正確に判断できました。
この経験からGENESIS開発では、PF・DD・取引回数に加えてリカバリーファクターを改良の評価指標のひとつとして使うようになりました。
リカバリーファクターとシャープレシオの違い
似た指標としてシャープレシオがあります。両者の違いを整理します。
シャープレシオはリターンのばらつき(標準偏差)に対してどれだけのリターンを得られたかを示します。月次リターンの安定性を評価する指標です。
リカバリーファクターは最大DDに対してどれだけの純利益を得られたかを示します。DDからの回復力・DD効率を評価する指標です。
EA評価においては、両方を確認することで補完的な情報が得られます。
シャープレシオが高くてリカバリーファクターも高いEAは、月次リターンが安定していてDDからの回復力も高い、総合的に優れたEAと判断できます。
シャープレシオについてはこちらで詳しく解説しています。
リカバリーファクターだけで判断してはいけない理由
リカバリーファクターは有用な指標ですが、これだけで判断することも危険です。
①バックテスト期間の長さに依存する
バックテスト期間が長いほど純利益が積み上がるため、リカバリーファクターが高くなりやすいです。短期間のバックテストと長期間のバックテストを同じ基準で比較することはできません。
必ず同じ期間(EA-Labでは10年)で比較することが重要です。
②取引数が少ないと信頼性が低い
取引数が少ない状態でのリカバリーファクターは統計的な信頼性が低いです。10年バックテストで数百回以上の取引がある状態で評価することが必要です。
③PF・DD・取引回数と組み合わせて評価する
リカバリーファクターが高くても、PFが低かったり取引数が極端に少なかったりする場合は総合的な評価が必要です。
EA-Labでは以下の指標を組み合わせてEAを評価しています。
PF(利益の安定性)・最大DD(リスクの大きさ)・取引回数(統計的信頼性)・リカバリーファクター(DD回復力)・シャープレシオ(月次リターンの安定性)・エクイティカーブの形状(安定性の視覚確認)
この6つを総合的に確認することで、EAの実力をより多角的に評価できます。
PFの正しい見方はこちらで解説しています。
最大DDの評価基準はこちらで解説しています。
EAを選ぶときにリカバリーファクターをどう使うか
EAを購入・選択するときにリカバリーファクターをどう活用するかをお伝えします。
①バックテスト結果にリカバリーファクターが記載されているか確認する
PFとDDだけを掲載してリカバリーファクターを記載していない販売サイトは、都合の悪い情報を隠している可能性があります。
MT5のバックテスト結果には自動的に表示されます。開発者が誠実であれば、この数値も公開しているはずです。
②3.0以上を一つの目安にする
バックテストでリカバリーファクター3.0以上あれば、DDに対して十分なリターンが出ていると判断できます。ただし異常に高い数値は過剰最適化を疑ってください。
③フォワードでも継続的に確認する
バックテストのリカバリーファクターとフォワードの推移を比較することで、ロジックの劣化を早期に発見できます。
バックテストの信頼性についてはこちらで解説しています。
まとめ
リカバリーファクターとは「純利益 ÷ 最大ドローダウン」で計算される、DDに対するリターンの効率を示す指標です。
PFとDDだけでは見えない「DDからの回復力」をリカバリーファクターが補完します。
目安はバックテストで3.0以上。異常に高い数値は過剰最適化を疑う。フォワードでも継続的に確認する。
GENESIS開発でPFが改善したはずの修正がリカバリーファクターでは悪化していたことに気づいた経験から、この指標の重要性を実感しています。
PF・DD・取引回数・リカバリーファクター・シャープレシオの5つを組み合わせることで、EAの実力をより正確に評価できます。
一つの指標だけで判断せず、複数の指標を組み合わせた総合評価がEA選びで失敗しないための基本です。