EA開発者はなぜバックテストを疑うのか?数字だけでは判断できない理由のアイキャッチ画像
EA検証 2026.06.18

EA開発者はなぜバックテストを疑うのか?数字だけでは判断できない理由

EAを探していると、必ずと言っていいほど目にするものがあります。

それがバックテスト結果です。

「10年間右肩上がり」

「勝率85%」

「PF3.0」

「最大ドローダウン5%」

このような数字を見ると、「こんなに成績が良いなら安心」と感じるかもしれません。

しかし、EAを3本開発し、何百回、何千回とバックテストを繰り返してきた立場から言うと、開発者ほどバックテストを信用していません。

バックテスト結果を見る際の具体的なチェックポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

少し意外に感じるかもしれません。

なぜなら、EA開発者はバックテストの素晴らしさを知っていると同時に、恐ろしさも知っているからです。

今回は、なぜ開発者がバックテストの数字だけでは判断しないのか、その理由を解説します。

バックテストはEA開発に欠かせない

まず誤解してほしくないのは、バックテストが無意味だと言いたいわけではありません。

むしろ、EA開発において最も重要な工程のひとつです。

バックテストがなければEAは作れない

例えば、新しいロジックを考えたとします。

そのロジックを、

  • 過去10年間ではどうだったか
  • どんな相場で負けるのか
  • 最大ドローダウンはどの程度か
  • 取引回数は十分か

こうした点を確認するためにバックテストを行います。

私たちがGENESIS・AXIS・凜を開発した時も、まず何度もバックテストを行いました。

何十、何百というアイデアを検証し、

「これは使える」

「これは相場によって崩れる」

という判断を繰り返しました。

つまり、バックテストはEA開発のスタート地点です。

なぜ開発者ほどバックテストを疑うのか

ここからが重要です。

開発者は、バックテストの数字を簡単に良くできることを知っています。

条件を調整すると数字は簡単に変わる

例えば、

  • エントリー条件を少し厳しくする
  • 利確幅を調整する
  • 損切り位置を変更する
  • 取引時間を限定する

これだけでも結果は大きく変わります。

実際、GENESIS開発中も、「これはすごい結果が出た」と思うことが何度もありました。

PFが大きく改善し、損益曲線も綺麗になる。

しかし、冷静に見ると、「過去の特定期間にたまたま合っただけではないか」というケースが多くありました。

過去の正解を探す作業になってしまう

バックテストで最も怖いのが、過去の答え探しになってしまうことです。

例えば、2018年から2025年までの相場で最高の成績が出る設定を探したとします。

その結果、

利益率500%
PF3.5
勝率90%

という素晴らしいEAができたとします。

しかし、そのEAが2026年以降でも勝てる保証はありません。

なぜなら、2018〜2025年という「過去の問題集で100点を取った」だけだからです。

未来という初めて見る問題で、同じ点数を取れるとは限りません。

そのため、バックテストだけではなく、実際の相場で検証するフォワードテストも欠かせません。

カーブフィッティングは開発者が最も恐れる問題

この問題を専門的にはカーブフィッティングと呼びます。

開発者が最も警戒するカーブフィッティングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

綺麗すぎる損益曲線は危険な場合がある

初心者ほど、「右肩上がりで綺麗なグラフ」を求めます。

しかし、開発者は逆に警戒します。

なぜなら、本当に長期間生き残るEAは、

  • 勝つ時期
  • 負ける時期
  • 停滞する時期

を繰り返すからです。

10年間一度も大きな落ち込みがないEAより、適度なドローダウンを経験しながら右肩上がりになっているEAの方が、現実的な場合もあります。

本当に見るべきなのは数字の裏側

では、バックテストで何を見るべきなのでしょうか。

PFだけを見るのは危険

例えば、PF3.0という数字だけでは判断できません。

重要なのは、

  • 取引回数は十分か
  • どんな相場で利益を出しているか
  • 一部期間だけ極端に勝っていないか

という点です。

最大ドローダウンを見る

利益率だけを見る人は多いですが、開発者は、「どれだけ勝ったか」より、「どれだけ負ける可能性があるか」を見ています。

これは実際に運用する時に、耐えられるかどうかに直結するからです。

GENESIS・AXIS・凜開発で最後に残したもの

3つのEAを開発していて、最終的に残ったロジックは、「最も利益が高いもの」ではありませんでした。

むしろ、利益を削ったロジックもあります。

理由は単純です。

未来の相場で生き残る可能性を優先したからです。

例えば、

  • PFが少し低い
  • 年間利益が少し落ちる
  • 損益曲線が少し荒れる

そんなロジックでも、

  • 取引回数が十分ある
  • さまざまな相場で動いている
  • ドローダウンが現実的

というものを選びました。

開発者として本当に怖いのは、「少し利益が少ないEA」ではありません。

「過去だけ異常に強いEA」です。

まとめ

EA開発者がバックテストを疑う理由は、バックテストが役に立たないからではありません。

むしろ、強力なツールだからこそ注意しています。

重要なのは、

  • 高いPF
  • 高い勝率
  • 綺麗な損益曲線

だけを見ることではありません。

その数字が、「なぜ生まれているのか」を考えることです。

損益曲線を見る際も、右肩上がりという結果だけではなく、その途中の負け方や停滞期間を見ることが重要です。

私たちがGENESIS・AXIS・凜を開発する中でも、何度も魅力的な数字に誘惑されました。

しかし、そのたびに、「これは未来でも通用するのか」という視点で見直してきました。

EAで長く利益を出すために必要なのは、過去最高の成績ではありません。

未来でも生き残れる可能性がある、現実的なロジックなのです。

上部へスクロール