「このEA、月利5%出てます」
EA販売サイトでよく見る表現です。月利5%と聞くと、毎月安定して5%増えていくイメージを持ちます。1年続けば年利60%。そう計算して購入を決める人も少なくありません。
しかしこの「月利」という見方が、EA運用における多くの誤解と失敗の原因になっています。
結論から言うと、EAの成績は月利ではなく年利で評価すべきです。 そしてその年利も、単純な数値だけでなくDDとのバランスで見る必要があります。GENESIS・凜・AXISを開発・運用してきた中で、月利という指標がいかに misleadingか、開発者目線で整理します。
月利という指標の問題点
月利が誤解を生みやすい理由は、月単位の成績には大きなバラツキがあるからです。
例えば年間を通じてプラスで終わるEAでも、月単位で見ると以下のような成績になることがあります。
1月:+3%、2月:-2%、3月:+5%、4月:+1%、5月:-3%、6月:+4%、7月:+2%、8月:-1%、9月:+6%、10月:+3%、11月:-2%、12月:+4%
月平均は約+1.7%、年間では約+20%のプラスです。しかし月単位で見ると、マイナスの月が4回あります。「月利5%」という表記からはこのバラツキが見えません。
EA販売サイトで表示される月利は多くの場合、「好調な月の成績」か「長期平均を単純に12で割った数値」です。どちらも実際の月ごとのバラツキを反映していません。
年利で考えるべき3つの理由
①月単位のバラツキが平均化される
年利で見ると、好調な月と不調な月が平均化されます。EAの本当の実力は、この平均化された数値に表れます。月利の高い月だけを切り取って評価するのではなく、1年間を通じた積み上がりで見ることが正確な評価につながります。
②相場環境の影響が均等化される
相場には季節性があります。夏枯れ相場・年末相場・重要イベントが集中する時期など、相場環境は月によって異なります。1年間を通して見ることで、様々な相場環境を経た上での実力が判断できます。
GENESISの10年バックテストを月別に分析すると、得意な月と苦手な月が存在します。BOXブレイクアウト型として、方向感が出やすい時期は成績が安定しやすく、膠着相場が続く時期は苦戦しやすい傾向があります。この傾向は月利だけを見ていると見えてきません。年利・複数年の推移で見て初めて把握できます。
③DDとのバランスが見えやすくなる
年利とDDを合わせて見ることで、リスクリターンの現実的な評価ができます。月利5%・年利60%という数値だけ見ると魅力的に見えますが、その裏にDD30%が存在するなら話は変わります。
EA-Labでは年利よりもむしろ**「年利÷最大DD」のバランス**を重視しています。高いリターンより、リスクに対して適切なリターンが出ているかどうかが長期運用の判断基準です。
ドローダウンの考え方についてはこちらで詳しく解説しています。
EA-Labが月利を前面に出さない理由
EA-Labの販売ページや記事では、月利を大きく打ち出すことをしていません。これは意図的な判断です。
理由は2つあります。
1つ目は月利は誤解を生みやすいからです。月利5%という数値を見て「毎月5%増える」と理解する人と「長期平均で月5%程度」と理解する人では、期待値が大きく異なります。購入後に「思ったより勝てない」と感じる原因の多くは、この期待値のズレにあります。
2つ目はEA-Labが目指しているのが長期運用の安定性だからです。GENESIS・凜・AXISはいずれもPF1.2〜1.5の範囲に収まる、派手さのない設計です。月利換算すると地味な数値になりますが、10年バックテストを通じて安定していることを重視しています。短期の月利より長期の再現性を選んでいます。
月利の現実的な水準についてはこちらも参考にしてください。
「年利60%」の罠
月利5%を12倍して年利60%と計算するのは、EA運用においては正しくありません。
複利効果の誤解
月利5%を複利で1年続けると、単純計算では年利約80%になります。しかし実際には毎月5%が出るわけではなく、マイナスの月もあります。複利の恩恵を受けるためには継続的なプラスが前提ですが、EAはそれを保証しません。
DD期間中の資金減少
DD期間中は資産が減少しています。この期間中にロットを維持していれば、資産に対するリスクは相対的に上がります。「月利5%×12ヶ月」という計算はDD期間の存在を無視しています。
EA-Labが複利運用に慎重な理由
AXISの開発でロット可変方式から固定ロットに変更したのも、この問題と関係しています。可変ロット方式は複利効果を狙えますが、DD局面でのリスクが増大します。固定ロット・偶数ロット運用を選んだのは、安定性を複利効果より優先したからです。
複利運用のリスクについてはこちらで詳しく解説しています。
正しい年利の見方
年利という指標も、単純な数値だけでは判断できません。正しく評価するためのポイントを整理します。
①何年分のデータを基にしているか
1〜2年の実績をもとにした年利は信頼性が低いです。EA-Labでは10年バックテストを基準にしており、10年間の平均年利でロジックの評価をしています。短期間の年利は相場環境に左右されやすいため、長期間のデータで見ることが重要です。
②年利とDDのバランスはどうか
年利20%・最大DD5%のEAと、年利20%・最大DD30%のEAでは、リスクの取り方が全く異なります。年利の数値だけでなく、どの程度のリスクを取ってその年利を出しているかをセットで確認します。
③年ごとのバラツキはどうか
10年間の平均年利が20%でも、良い年は40%・悪い年は-10%という場合と、毎年15〜25%の範囲に収まっている場合では、安定性が大きく異なります。平均だけでなく、年ごとのバラツキを確認することが長期運用の判断材料になります。
EAの損益曲線の見方についてはこちらも参考にしてください。
短期の数字に惑わされないために
月利という短期の数字に惑わされないための実践的な考え方を整理します。
「今月の成績」より「今年の成績」を見る習慣を持つ
EA運用を始めたら、月次の損益を記録しながら年間の積み上がりを確認する習慣を持つことです。月単位での一喜一憂ではなく、年単位での評価に切り替えることで、感情的な判断が減ります。
不調な月を「想定内」として受け入れる
マイナスの月が出たとき、それがバックテスト上でも同様の局面が存在するなら想定内です。月利という短期視点で見ると「失敗」に見えることも、年利という長期視点で見ると「許容範囲の一部」になります。
販売サイトの月利表記を疑う習慣を持つ
月利5%という表記を見たとき、「どの期間の平均か」「月ごとのバラツキはどうか」「DDはいくつか」を確認する習慣を持つことが、EA選びで失敗しないための基本です。
EAを買う前に確認すべき項目についてはこちらで整理しています。
まとめ
EAの成績は月利ではなく年利で評価する。これがEA運用で長く生き残るための基本的な視点です。
月利という指標は短期のバラツキを隠し、期待値を実態より高く見せる可能性があります。EA-LabがGENESIS・凜・AXISで月利を前面に出さないのは、長期運用の安定性を最優先にしているからです。
年利・最大DD・取引数のバランスを長期間のデータで確認すること。この習慣が、EA選びと運用判断の両方で最も重要なスキルになります。