EA運用を始めると、多くの人が最初に大きな不安を感じる瞬間があります。
それは、含み損が増えていく時です。
昨日まで順調に利益が出ていたEAが、ある日突然マイナスになる。
含み損が数千円、数万円と増えていく。
すると、
- 「このままロスカットになるのでは?」
- 「EAが壊れたのでは?」
- 「今すぐ停止した方が良いのでは?」
と不安になると思います。
しかし、EAを3本開発し、バックテストとフォワードテストを繰り返してきた立場から言うと、含み損が発生すること自体は異常ではありません。
重要なのは、「いくら含み損があるか」ではなく、その含み損が事前に想定していた範囲なのかという視点です。
EAの停止判断では、連敗回数も含めて総合的に考える必要があります。連敗と停止判断の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
今回は、EAの含み損とどう向き合うべきか、初心者が間違いやすいポイントについて解説します。
含み損=悪いEAではない
まず理解しておきたいのは、含み損があること自体は悪ではないということです。
トレードには必ず含み損になる瞬間がある
例えば、順張り型のEAを考えてみましょう。
上昇トレンドを狙って買いエントリーした場合でも、一時的な押し目によってマイナスになることがあります。
逆張りEAであれば、さらに大きな含み損を抱えながら反転を待つこともあります。
つまり、含み損ゼロのEAは存在しません。
大切なのは、「利益になる前にどの程度のマイナスを許容する設計なのか」です。
含み損を見る時は最大含み損を確認する
EAを評価する時、多くの初心者は利益だけを見ます。
しかし開発者は、
- 最大利益
- 勝率
- PF
- 最大ドローダウン
だけではなく、最大含み損(Max Floating Drawdown)も非常に重要な指標として確認します。
なぜなら、最終的に利益が出ていても、途中で耐えられなければ意味がないからです。
含み損とドローダウンは違う
ドローダウンの考え方や、実際に停止を検討する基準については、以下の記事で詳しく解説しています。
ここは初心者が特に混同しやすい部分です。
含み損は「現在進行中の損失」
含み損とは、まだ決済していないポジションの損失です。
つまり、「現在どれだけマイナスになっているか」という数字です。
ドローダウンは資産の下落幅
一方でドローダウンは、資産のピークからどれだけ減少したかを表します。
ここには、
- 確定損失
- 含み損
の両方が影響します。
そのため、含み損が小さくても連敗によって大きなドローダウンになることもあります。
逆に、一時的に大きな含み損を抱えても、設計通りに戻って利益になるEAもあります。
この違いを理解することが重要です。
何円の含み損まで耐えるべきか
ここで多くの人が知りたいのが、「結局いくらまで耐えて良いの?」ということだと思います。
しかし、残念ながら一律の答えはありません。
金額ではなく割合で考える
例えば、
10万円の口座で5万円の含み損。
1000万円の口座で5万円の含み損。
同じ5万円でも意味は全く違います。
そのため、「含み損が10万円になったら停止」という考え方は危険です。
重要なのは、口座資金に対して何%の含み損なのかという視点です。
バックテストの想定範囲を基準にする
私なら、バックテストで確認した最大含み損を基準にします。
例えば、
過去10年間の最大含み損:15%
だったEAなら、
10%程度の含み損は想定内です。
もちろん、バックテストを超えることもあります。
しかし、過去の想定値を大きく超えるような含み損が発生した場合は、相場環境の変化やロジックの異常を疑う材料になります。
ナンピンEAの含み損には特に注意する
含み損を考える上で、最も注意が必要なのがナンピン型EAです。
含み損を抱えることが前提のロジック
ナンピンEAは、価格が逆方向に進んだ時に追加でポジションを持つことで、平均取得価格を調整します。
そのため、大きな含み損を抱えること自体はロジック上想定されています。
問題は「どこまで耐えられる設計か」
ここで見るべきなのは、「今含み損があるか」ではありません。
確認するべきなのは、
- 最大ポジション数
- 想定最大含み損
- 必要証拠金
- ロスカットまでの余裕
です。
利益率だけを見てナンピンEAを選ぶと、大きな含み損に耐えられず途中で停止してしまうケースがあります。
販売者が公開する高い利益率を見る際にも、含み損やドローダウンなど裏側のリスクを確認することが重要です。
高利益の裏にあるリスクを理解せずに運用すると、資金を大きく失う原因になります。
GENESIS・AXIS・凜開発で考えていたこと
私たちが3つのEAを開発する中でも、「どこまでの含み損を許容するか」は非常に重要なテーマでした。
利益だけを追求するなら、損切りを遠くしたり、ポジションを長く持ったりすることで、一時的には成績を改善できる場合があります。
しかし、それでは実際に運用する人が耐えられません。
例えば、バックテストでは利益が出る。
でも途中で資金の30%、40%の含み損が発生する。
このようなEAを、何年間も安心して運用できるでしょうか。
私たちはそう考え、「勝てるEA」ではなく、「負け方が想定できるEA」を目指して調整してきました。
これは、実際にEAを開発したからこそ強く感じる部分です。
含み損が停止判断になるケース
最後に、含み損を理由に停止を検討するケースについて説明します。
バックテストの想定を大きく超えた場合
過去の検証で経験していないレベルの含み損が発生した場合は注意が必要です。
ロジックと異なる動きをしている場合
本来なら決済される条件なのに決済されない。
想定していないポジションが増えている。
こうした場合はEAの異常も考えられます。
資金管理の限界を超えている場合
どれだけ優秀なEAでも、資金管理を超える含み損を抱えてしまえば継続はできません。
利益を取り戻すことよりも、資金を守ることを優先する必要があります。
まとめ
EAの含み損は、発生した時点で危険というわけではありません。
大切なのは、
- その含み損は設計通りか
- バックテストの範囲内か
- 資金に対して適切な割合か
- ロスカットまで余裕があるか
という点です。
含み損を見るたびにEAを停止していては、どんなEAも長期運用できません。
一方で、「いつか戻るだろう」と根拠なく耐え続けることも危険です。
私たちがGENESIS・AXIS・凜を開発する中で大切にしていたのも、「どこまで負ける可能性があるのかを理解した上で運用できること」でした。
EA運用で重要なのは、含み損をゼロにすることではなく、想定内の含み損と想定外の異常を見極めることです。