「PF1.2って低くないですか?」
EAを見ていると、ほぼ確実に出てくるこの疑問。実際、世の中にはPF1.5、2.0、時には3.0以上といった魅力的な数字が並んでいます。そうした数値と比較すると、PF1.2はどうしても見劣りするように感じるのは無理もありません。
ですが、結論から言うと、その認識こそが最も危険です。
EA-Labでは、あえてPF1.2前後を目標に設計しています。これは妥協ではなく、むしろ“現実を踏まえた上での最適解”です。本記事では、その理由を開発者視点で解説します。
PFが高い=優秀なEAではない
まず前提として、PFは「利益 ÷ 損失」で算出されるシンプルな指標です。
つまり、数字だけ見れば高いほど良さそうに見えます。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
PFは簡単に作れる数字です。
PFについては以下でまとめています。
・トレード回数を減らす
・都合のいい期間だけ切り取る
・最適化で過去に合わせ込む
これらを行えば、PFは簡単に上がります。
特にバックテストの世界では、PFを上げること自体はそれほど難しくありません。問題は、その数字が「未来でも通用するか」です。
そしてここが、ほとんどのEAが崩れるポイントです。
なぜPFが高いEAほど崩れやすいのか
PFが高いEAの多くは、「特定の相場に強く最適化されている」状態です。
これは一見良さそうに見えますが、実際には非常に脆い構造です。
相場は常に変化します。
トレンド、ボラティリティ、時間帯の癖、すべてが少しずつズレていきます。
そのズレに対して、
・余裕を持って設計されているEA
・ギリギリまで最適化されたEA
どちらが生き残るかは明白です。
PFが高いEAほど、後者になりやすい。
つまり、「過去には強いが、未来には弱い」状態です。
PF1.2という設計思想
では、なぜPF1.2なのか。
これは一言で言うと、「余白を残した設計」です。
・多少のスリッページがあっても崩れない
・スプレッドが広がっても耐えられる
・相場環境が変わっても破綻しない
こうした“現実のズレ”を吸収できるラインが、PF1.2前後です。
逆に言えば、PF1.5や2.0を安定して維持するには、かなり条件を絞り込む必要があります。それはつまり、未来への耐性を削る行為でもあります。
GENESIS・凜・AXIS開発で見えた共通点
これは机上の理論ではなく、実際の開発過程で何度も確認してきた事実です。
GENESIS、凜、AXISの3つを開発する中で、共通して起きたことがあります。
それは、「PFを上げにいくと壊れる」という現象です。
例えばGENESISの開発初期、PF1.4〜1.5まで持っていくことは可能でした。ですが、その状態でフォワードテストに回すと、
・取引回数が極端に減る
・特定期間でしか利益が出ない
・ドローダウンの質が悪化する
といった問題が出てきました。
同じことは凜でも起きています。アノマリーを強く効かせればPFは上がる。しかし、それは「その癖が機能する期間だけの話」です。
AXISでも同様で、トレンド条件を厳しくすればPFは上がるが、その分エントリーが減り、統計的な信頼性が落ちる。
結果として、3つとも最終的に落ち着いたのが「PF1.1〜1.3」のゾーンでした。
ここが最もバランスが良く、フォワードでも崩れにくかったのです。
フォワードの見方についてはこちらをどうぞ。
PFより重要なもの
ヒントはこちらの記事にて紹介しています。
PF1.2という数字を理解するには、「PF以外の要素」をセットで見る必要があります。
・取引回数
・最大ドローダウン
・リカバリーの速さ
・フォワードテストの安定性
これらを含めて初めて、そのEAの“本当の強さ”が見えてきます。
例えば、
PF1.8・年20回トレード
PF1.2・年200回トレード
この2つを比較したとき、どちらが信頼できるか。
多くの場合、後者です。
理由はシンプルで、試行回数が多いほど「再現性」が高くなるからです。
PF1.2は「長期運用前提」の数字
EA-Labの前提は一貫しています。
短期で大きく稼ぐことではなく、長期で資産を積み上げること。
その前提に立つと、
・多少のブレに耐えられる
・相場変化に適応できる
・継続できる設計
これが最重要になります。
PF1.2は、そのために最適化された数字です。
言い換えれば、「派手さを捨てた代わりに、生存率を最大化した設計」です。
「低い」と感じる理由の正体
多くの人がPF1.2を低いと感じるのは、「比較対象」が間違っているからです。
そもそものバックテストについて詳しく掘り下げたい場合はこちらをご参照ください。
SNSや販売サイトに並んでいるのは、ほぼ例外なく“最も良い状態の数字”です。
・最適化済み
・都合のいい期間
・見栄え重視
これと比較すれば、どんなEAでも見劣りします。
しかし、実際の運用では、
・スプレッドは変動する
・スリッページは発生する
・相場は変わる
この現実を加味したとき、数字は必ず落ちます。
その前提で設計されたPF1.2は、むしろ「現実に近い数値」です。
まとめ
PF1.2は低い数字ではありません。
むしろ、「現実で使えるEA」を作るために必要なラインです。
・PFは簡単に作れる
・高PFほど未来に弱い
・開発を突き詰めると1.2前後に収束する
この3点を理解しておくと、EA選びで大きく失敗する可能性は下がります。
数字の見栄えではなく、「生き残る設計かどうか」。
そこに注目できるかどうかが、結果を分けます。