EAを探していると、ほぼ必ず目にするのが「綺麗な右肩上がりのバックテスト」です。
一直線に伸び続ける資産曲線。
小さなドローダウン。
高いPF。
異常な勝率。
一見すると、「これは強そうだ」と感じます。
ですが、EA開発を実際に経験すると、逆に“綺麗すぎる右肩上がり”に違和感を覚えるようになります。
結論から言うと、バックテストの右肩上がりは、それ単体ではほとんど信用できません。
重要なのは、「なぜその形になっているのか」です。
今回は、GENESIS・凜(RIN)・AXISを開発してきた中で実際に経験したことも交えながら、危険な右肩上がりの特徴を解説します。
右肩上がり=優秀なEAではない
まず前提として、右肩上がり自体は悪いことではありません。
問題は、「綺麗すぎる」場合です。
相場は本来、不規則です。
- トレンド
- レンジ
- 急変動
- 低ボラ
- 高ボラ
これらが混在しています。
そんな環境の中で、本当に優秀なEAでも、
- 停滞期間
- ドローダウン
- 横ばい期間
は普通に発生します。
つまり、リアルなEAほど、資産曲線には波が出ます。
逆に、ほぼ一直線で伸び続けるEAは、「何かを犠牲にしている可能性」を疑った方がいいです。
EA開発で最初にハマる罠
これはEA開発あるあるです。
最初は誰でも、「できるだけ綺麗な右肩上がりを作りたい」と思います。
実際、GENESIS開発初期の頃もそうでした。
パラメータを調整し、エントリー条件を絞り、不要トレードを削る。
すると、バックテストはどんどん綺麗になります。
PFも上がる。
DDも減る。
勝率も上がる。
ですが、その状態でフォワードに回すと崩れる。
これは本当に何度も経験しました。
なぜ綺麗な右肩上がりは危険なのか
理由はシンプルです。
「過去に合わせ込みすぎている可能性が高いから」
です。
つまり、カーブフィッティング。
カーブフィッティングについてはこちらをご参照ください。
過去データ専用EAになっている状態です。
例えば、
- 2022年だけ異常に強い
- 特定相場だけ爆発的に勝つ
- 条件を厳しくしすぎている
こうしたEAは、バックテスト上では非常に綺麗な右肩上がりになります。
しかし、未来相場では簡単に崩れます。
なぜなら、未来は過去と完全一致しないからです。
「ノイズ」を削りすぎる問題
ここがかなり重要です。
EA開発では、どうしても「負けトレードを消したくなる」瞬間があります。
例えば、
- この時間帯を除外
- この曜日を除外
- この値幅を除外
- このボラを除外
すると、どんどんバックテストが綺麗になる。
ですが、これは危険です。
なぜなら、相場のノイズまで削ってしまうから。
実際の相場には、
- 意味のない動き
- 不規則な値動き
- 急変動
が必ず存在します。
つまり、現実にはノイズがある。
そのノイズ込みで利益が残る設計でなければ、長期運用はかなり厳しいです。
凜(RIN)開発で捨てたロジック
凜の開発時も、この問題にはかなり悩みました。
アノマリー系EAは、条件を絞れば絞るほど綺麗になります。
例えば、
- 特定曜日だけ
- 特定時間だけ
- 特定ボラだけ
に絞ると、バックテストは異常に美しくなる。
ですが、実運用では突然機能しなくなる。
特に祝日前後のロジック検証では、過去には綺麗にハマっていた条件が、リアルでは全く再現されないケースがありました。
結果的に、そのロジックは不採用になっています。
この時かなり強く感じたのが、「綺麗さは、強さではない」ということでした。
AXISで逆に重視したこと
AXISでは、逆に「多少汚くてもいい」という考え方をかなり重視しています。
もちろん破綻レベルのDDはダメです。
ですが、
- 適度な負け
- 停滞期間
- 横ばい期間
が存在すること自体は、むしろ自然です。
AXISはトレンドフォロー型なので、レンジで苦しむ期間があります。
これは避けられません。
ですが、その代わりにトレンドで取り返す。
この波込みで成立している。
EA-Labでは、こうした「リアルな曲線」をかなり重視しています。
危険なバックテストの特徴
では具体的に、どんな右肩上がりが危険なのか。
EA-Lab視点では、特に以下は警戒しています。
① ドローダウンが異常に少ない
これはかなり危険サインです。
相場で利益を取る以上、DDゼロに近いというのは不自然です。
特に、
- PFだけ異常に高い
- DDだけ異常に低い
場合は要注意。
条件を絞り込みすぎている可能性があります。
② 取引回数が極端に少ない
例えば、「10年で50回しかトレードしていない」これでPF2.5と言われても、統計的信頼性はかなり低いです。
実際、GENESIS開発でも、条件を厳しくすればPFは上がりました。
ですが、取引回数が減りすぎると、再現性が怪しくなる。
だからEA-Labでは、「取引回数」はかなり重視しています。
③ 特定期間だけ強い
これも多いです。
例えば、
- コロナ相場だけ異常に強い
- 円安トレンドだけ爆勝ち
- 低金利相場だけ強い
これは相場にハマっただけの可能性があります。
本当に重要なのは、「異なる環境でも生き残れるか」です。
④ 滑らかすぎる資産曲線
本当に綺麗すぎるものは、逆に疑った方がいいです。
リアル運用では、
- スプレッド拡大
- スリッページ
- 急変動
- 約定ズレ
が必ず発生します。
つまり、現実はもっと荒れます。
その前提で見ると、一直線の右肩上がりは現実離れしていることがあります。
本当に見るべきなのは「崩れ方」
EA-Labでかなり重視しているのがここです。
「勝ち方」ではなく、「負け方」。
例えば、
- DDから戻れるか
- 崩れた時に壊れないか
- 急変動で致命傷にならないか
ここを見ています。
GENESISも、実際には綺麗な一直線ではありません。
凜も停滞期があります。
AXISもレンジで苦しみます。
ですが、死なない。
これが重要です。
GENESISが高勝率の理由をまとめています。
バックテストは「理想環境」
ここを忘れてはいけません。
バックテストは、あくまで理想環境です。
バックテストについて詳しくまとめた記事があるのでこちらもどうぞ。
実際のリアル運用では、
- スプレッド変動
- 約定差
- VPS遅延
- 心理的ブレ
が入ります。
つまり、リアルはもっと汚くなる。
バックテストと実運用の乖離についてはこちら。
だからEA-Labでは、「バックテストが少し汚いくらい」をむしろ自然だと考えています。
右肩上がりを見る時の正しい考え方
大切なのは、「綺麗かどうか」ではありません。
見るべきなのは、
- 取引回数
- DDの質
- 停滞期間
- フォワード整合性
- 異常相場耐性
です。
右肩上がりは、その結果として見るもの。
形だけを見ても、本質はわかりません。
フォワードテストの見方はこちらをご参照ください。
まとめ
EAの右肩上がりバックテストは、単体では信用できません。
むしろ、
- 綺麗すぎる
- DDが少なすぎる
- PFが高すぎる
- 取引回数が少なすぎる
場合は、注意が必要です。
EA-Labでも、GENESIS・凜・AXISの開発を通して、「綺麗さより、生存率」を重視するようになりました。
本当に重要なのは、未来でも壊れないこと。
バックテストを見る時は、ぜひそこを意識してみてください。