「GENESIS・凜・AXISを全部動かしたい。でも証拠金はどう配分すれば良いのか」
3本のEAを揃えたとき、次に直面するのがこの問題です。
証拠金の配分を間違えると、せっかくポートフォリオを組んでいても意味がなくなります。1本のEAに証拠金を集中させすぎて、他のEAがまともに動かない。全体のロットを上げすぎて、DD局面で証拠金が枯渇する。こういったパターンが実際に起きます。
EA-LabではGENESIS・凜・AXISを3本ポートフォリオとして設計しました。開発段階から「どう組み合わせるか」だけでなく、「どう証拠金を配分するか」まで考えてきました。
この記事では、複数EA運用における証拠金配分の現実的な考え方を、開発経験をもとに解説します。
証拠金配分を考える前に理解すべきこと
証拠金配分を考えるとき、多くの人が「各EAに均等に分ける」という発想から入ります。
3本のEAがあれば3等分。これは一見シンプルで合理的に見えます。
しかし均等配分が必ずしも正解ではありません。
理由は各EAの特性が異なるからです。
取引頻度・DD水準・1トレードあたりのリスク。これらはEAによって全く異なります。特性が異なるEAに均等に証拠金を配分すると、各EAのリスクが均等にはなりません。
証拠金配分は「金額を均等にすること」ではなく、「各EAのリスクを適切にコントロールすること」が目的です。
EA-Labの3本が持つ異なる特性
GENESIS・凜・AXISのそれぞれの特性を整理します。
GENESIS(BOXブレイクアウト・GBPUSD・M15)
10年バックテスト:PF1.17・最大DD8.69%・取引数1,223・勝率69.99% 月平均取引数は約10回。GBPUSDのボラティリティが高いため、1回のトレードで動く金額が大きくなりやすい特性があります。
凜(アノマリー・USDJPY・M5)
10年バックテスト:PF1.47・最大DD7.20%・取引数451・勝率79.16% 月平均取引数は約3〜4回と少ない。USDJPYはGBPUSDより値動きが穏やかですが、取引数が少ないため月ごとのバラつきが大きくなりやすい特性があります。
AXIS(トレンドフォロー・EURUSD・M15)
10年バックテスト:PF1.25・最大DD12.49%・取引数1,186・勝率67.20% 月平均取引数は約10回。最大DDが12.49%と3本の中で最も大きく、レンジ相場ではDDが出やすい特性があります。
この3本の特性の違いが、証拠金配分を考えるときの重要な前提になります。
証拠金配分の基本的な考え方
EA-Labが証拠金配分を考えるときの基本原則はこうです。
「各EAのDD上限が発生したとき、許容できる損失金額に収まるように配分する」
具体的に考えます。
運用資金が100万円で3本のEAを動かす場合を例にします。
各EAのDD上限を10%と設定すると、各EAで発生しうる最大損失はそれぞれの運用資金の10%です。
3本が同時にDD局面に入った最悪のケースを想定すると、合計のDD上限は全体資金の何%になるかを計算します。
均等配分(各33万円)の場合、各EAのDD10%は3.3万円。3本合計で最大9.9万円のDD。これは全体資金100万円の約10%です。
この計算で「3本合計のDDが全体資金の10〜15%以内に収まるか」を確認することが基本です。
現実的な証拠金配分の目安
XMのマイクロ口座(MT5)で3本を運用する場合の現実的な配分を考えます。
マイクロ口座の最低ロットは0.1ロットです。各EAを最低ロット0.1で動かすために必要な証拠金を基準に考えます。
最低限の証拠金で3本を動かす場合
GENESIS・凜・AXISそれぞれを0.1ロットで動かす場合、合計で6万円程度が最低ラインになります。ただしこの水準ではDDバッファが薄く、ロットの調整幅もありません。
現実的に安定運用できる証拠金
3本をある程度のバッファを持って運用するには、合計10〜20万円程度が現実的なスタートラインです。
各EAに5〜7万円程度を配分し、0.1ロットで動かしながらフォワードを確認する形です。
ロットを上げていく場合
フォワードで信頼性が確認できた後、ロットを上げる際も各EAのDD上限と資金のバランスを確認しながら段階的に進めます。
AXISの最大DDが大きいことへの対応
3本の中でAXISの最大DDは12.49%と最も大きいです。
これはトレンドフォロー型の特性上、レンジ相場でDDが出やすいためです。
この特性を考慮すると、AXISの配分資金はGENESISや凜より若干多めに確保することを推奨します。
具体的には、同じロットで動かす場合にAXISの配分資金をGENESISの1.2〜1.5倍程度にすることで、DD局面でのバッファが確保できます。
例えばGENESISに5万円・凜に5万円配分するなら、AXISには6〜7万円程度を配分するイメージです。
AXISのロット設計については開発段階でこの問題に直面しました。当初のロット可変方式では、DD局面での損失管理が難しかったため固定ロット方式に変更しています。証拠金配分の設計も、この固定ロット方式を前提に考えています。
証拠金が少ない場合の現実的な対応
「3本全部動かしたいけど資金が少ない」という場合の現実的な対応を説明します。
①まず1本から始める
資金が十分でない場合は、無理に3本を同時に動かすより1本をしっかり動かす方が良いです。
EA-Labでも最初からポートフォリオ前提で設計していますが、「3本同時に始めなければならない」わけではありません。まずGENESISを動かしながら資金を積み上げ、余裕ができたら凜・AXISを追加するという段階的なアプローチで全く問題ありません。
②各EAを最低ロットで動かす
資金が限られている場合、各EAを最低ロット0.1で動かすことを優先します。収益よりも「EAが設計通りに動くかの確認」がこの段階の目的です。
③ロットより資金のバッファを優先する
「もう少しロットを上げれば稼げる」という誘惑に負けないことが重要です。DD局面で証拠金が枯渇するリスクを避けるため、ロットより資金のバッファを厚く保つことを優先します。
スモールスタートの考え方についてはこちらで詳しく解説しています。
証拠金配分で陥りやすい罠
複数EA運用の証拠金配分でよくある失敗パターンをお伝えします。
①好調なEAに証拠金を集中させる
「GENESISが調子良いからGENESISにもっと資金を入れよう」という判断です。好調な時期にロットを上げると、その後のDD局面でダメージが大きくなります。
②全EAのロットを同時に上げる
「3本全部のロットを上げれば収益が3倍になる」という発想です。全EAのロットを同時に上げると、合計のリスクが一気に膨らみます。DD局面が重なったときの損失が想定外に大きくなります。
③DがD出るとすぐに証拠金を追加する
「証拠金が減ってきたから追加で入金しよう」という判断です。DD局面での追加入金は、そのEAのロジックが崩壊しているサインを見逃す原因になります。DDがバックテストの範囲内かどうかを確認してから判断してください。
資金管理の基本はこちらで詳しく解説しています。
3本のポートフォリオが機能する条件
証拠金配分が適切でも、ポートフォリオとして機能するためには追加の条件があります。
各EAが独立して動いていること
GENESIS・凜・AXISは通貨ペア・ロジック・時間足が全て異なります。これが適切に機能することで、同じタイミングで3本が同じ方向に大きなポジションを持つリスクを下げられます。
定期的な確認を怠らないこと
証拠金配分を決めたら終わりではありません。各EAのフォワード結果を定期的に確認して、バックテストとの乖離が大きくないかをチェックします。
感情で配分を変えないこと
「あのEAが調子悪いからこっちに移そう」という感情的な判断は避けます。配分変更は数値に基づいて行います。
複数EA運用のリスク管理についてはこちらで詳しく解説しています。
まとめ
複数EA運用における証拠金配分の現実的な考え方をまとめます。
証拠金配分の目的は金額を均等にすることではなく、各EAのリスクを適切にコントロールすることです。
EA-Labの3本ポートフォリオでは、各EAの特性(DD水準・取引頻度・通貨ペアの特性)を考慮した配分を推奨しています。特にAXISは最大DD12.49%と他の2本より大きいため、配分資金をやや多めに確保することが現実的です。
資金が十分でない場合は無理に3本を同時に動かさず、まず1本から始めて段階的に追加していくアプローチが安全です。
証拠金配分の設計は「いかに稼ぐか」より「いかに資金を守りながら長期運用するか」を優先して考えてください。