EAは相場の急変(ショック相場)でどうなるのか?リーマン・コロナ・円安ショックから学ぶリスクのアイキャッチ画像
EA運用ガイド 2026.05.01 更新: 2026.04.29

EAは相場の急変(ショック相場)でどうなるのか?リーマン・コロナ・円安ショックから学ぶリスク

「ショック相場のとき、EAは大丈夫なのか」

EA運用を始めた人が一度は気になる疑問です。

リーマンショック・コロナショック・2022年の円安ショック。こういった急激な相場変動のとき、EAは人間のように「やばい、止めよう」という判断ができません。ロジック通りに動き続けます。

それは強みでもあり、リスクでもあります。

EA-LabではGENESIS・凜・AXISの開発過程で、ショック相場時のEAの動きをバックテストで何度も確認してきました。「このロジックはショック相場でどう動くか」は、開発段階から最も意識してきた問いの一つです。

この記事では、ショック相場でEAに何が起きるのか、そのリスクをどう理解して対応すべきかを開発経験をもとに解説します。

ショック相場とは何か

ショック相場とは、通常の値動きの範囲を大きく超えた急激な価格変動が発生する相場のことです。

代表的なショック相場はこうです。

リーマンショック(2008年)

米国の金融危機から世界規模の経済崩壊に発展。FX市場では円が急騰し、クロス円通貨ペアが歴史的な暴落を記録しました。

コロナショック(2020年)

新型コロナウイルスのパンデミックによる世界同時株安。FX市場でも急激なリスクオフの動きが発生し、短期間で大きな値動きが続きました。

円安ショック(2022〜2023年)

日米金利差の拡大を背景とした急速な円安進行。USDJPYが1年で30円以上動くという歴史的な動きになりました。

スイスフランショック(2015年)

スイス国立銀行が突然ユーロとのペッグ制を撤廃。EURCHFが一瞬で数千pips動き、多くのトレーダーが証拠金を吹き飛ばしました。

これらのショック相場では、通常のロジックが想定していない動きが発生します。

ショック相場でEAに起きること

ショック相場でEAに発生する問題は主に3つです。

①スプレッドの急拡大

ショック相場では流動性が低下してスプレッドが大幅に拡大します。通常2〜3pipsのスプレッドが、100pips以上に拡大するケースもあります。

この状態でEAがエントリーすると、エントリー直後から大きなマイナスからスタートします。SLに設定したpips数がスプレッド拡大だけで吹き飛ぶことがあります。

②スリッページの発生

注文した価格と実際の約定価格が大きくズレます。SLを設定していても、想定より遥かに悪い価格で損切りされるケースがあります。

③ロジックが機能しない局面の発生

EAのロジックは通常の相場環境を前提に設計されています。ショック相場では値動きのパターンが通常と全く異なるため、ロジックが機能しない局面が発生します。

GENESISのBOXブレイクアウトであれば、ショック相場で頻繁に発生するダマシに巻き込まれやすくなります。凜のアノマリーは市場の「通常の癖」を使うため、ショック相場では癖が崩れます。AXISのトレンドフォローは急激なトレンド転換に対応しにくいです。

GENESIS開発でショック相場を確認したこと

GENESISの開発段階で、10年バックテストを実施したとき、必ずショック相場の期間がどう影響するかを確認しました。

特に意識したのはコロナショック(2020年3月)の期間です。

GBPUSDはコロナショックで急落・急反発を繰り返す荒れた相場になりました。GENESISのBOXブレイクアウトロジックにとって、この時期は「ブレイクしたと思ったら即反転」というダマシが多発する最悪の相場環境です。

バックテストでこの期間を確認すると、DDが集中して発生していることがわかりました。

この結果を見て判断したのは「コロナショックのようなショック相場でDDが出ることは織り込み済みで、その後回復できるロジックかどうか」です。

結果として、コロナショック後のGENESISのバックテストはDDから回復して長期的にプラスを維持していました。ショック相場でDDが出ることよりも、ショック相場後に回復できるロジックかどうかの方が重要という判断に至りました。

円安ショックと凜への影響

2022〜2023年の円安ショックは、凜のUSDJPYロジックに直接影響しました。

USDJPYが1年で30円以上動くという異常な相場環境は、凜のアノマリーロジックが前提にしている「通常の時間帯・曜日の癖」を大きく崩しました。

バックテストでこの期間を確認すると、凜の成績が通常期より安定しにくい局面があることが確認できました。

この経験から強く感じたのは「アノマリーは相場の構造が大きく変わるショック相場に弱い」ということです。

凜の開発思想として「シンプルなロジックで本質的な優位性を取る」を重視しているのは、複雑な条件を加えるほどショック相場への対応力が落ちるからという理由もあります。

ショック相場に対してEAができること・できないこと

ショック相場に対してEAができることとできないことを整理します。

EAができること

SLによる損失の上限設定です。ショック相場でも、SLが機能する限り1トレードの損失は限定されます。スリッページで想定より悪い価格での損切りになることはありますが、SLがない状態よりは遥かにリスクが小さくなります。

感情的な判断を排除することです。ショック相場で人間が裁量トレードをすると、パニックになって最悪のタイミングで大きなポジションを持ったり、損切りできなかったりします。EAはロジック通りに動くため、こういったパニック売買は発生しません。

EAができないこと

ショック相場を事前に察知して止まることはできません。ロジックに従って動き続けます。

スプレッドの急拡大・スリッページを完全に回避することはできません。流動性が枯渇した市場での注文は、想定外の価格で約定するリスクがあります。

通常の相場環境と全く異なるパターンに即座に対応することはできません。ロジックは設計段階の前提を超えた動きには対応できません。

ショック相場のリスクを軽減するために

ショック相場のリスクを完全にゼロにすることはできません。しかしリスクを軽減するためにできることがあります。

①長期バックテストでショック相場の期間を確認する

購入・運用するEAのバックテストが2015年以降であれば、スイスフランショック・コロナショック・円安ショックが含まれています。これらの期間でEAがどう動いたかを確認してください。

ショック相場の期間に異常に大きなDDが出ていたり、回復できていない場合は注意が必要です。

②適切なSLを設定する

SLがないEAは論外です。ショック相場でスリッページが発生しても、SLが設定されていれば損失の上限が決まります。

③資金とロットのバランスを保つ

ショック相場でのDDを許容範囲内に収めるためには、資金に対してロットが適切なサイズであることが前提です。無理なロットで運用していると、ショック相場の一発で証拠金が枯渇します。

④ポートフォリオで分散する

GENESIS・凜・AXISのように、通貨ペア・ロジックが異なるEAを組み合わせることで、特定のショック相場での影響を分散できます。円安ショックが凜に影響を与えても、GENESISやAXISへの影響は異なります。

資金管理の基本についてはこちらで詳しく解説しています。

ショック相場を「想定内」にする考え方

ショック相場は必ず来ます。いつ来るかはわかりませんが、来ることは確実です。

EA運用で重要なのは「ショック相場が来ても耐えられる設計にしておくこと」です。

EA-Labが開発目標として最大DD10%未満を設定しているのはこの考え方からです。ショック相場でDDが通常期より大きくなることを前提に、通常期のDDを抑えておくことで、ショック相場での損失が致命的にならない水準を目指しています。

GENESISの10年バックテストで最大DD8.69%という数値は、リーマンショック後のデータは含まれていませんが、コロナショック・円安ショックを含んだ期間での数値です。これらのショック相場を経験した上での数値として、現実的な水準と判断しています。

ショック相場をゼロにしようとするのではなく、ショック相場が来ても運用を継続できる資金管理を設計することが本質です。

最大DDの考え方についてはこちらで詳しく解説しています。

EAを止めるべきショック相場かどうかの判断基準

「このショック相場ではEAを手動で止めるべきか」という判断が必要になることがあります。

EA-Labの基準はこうです。

止めなくて良い場合

DDがバックテストの最大DDの2倍以内に収まっている場合。ロジックが意図通りに動いている場合(エントリー・決済のタイミングが設計通り)。

止めることを検討する場合

DDがバックテストの最大DDの2倍を超えた場合。スプレッドが異常に拡大していてEAが不利な価格でエントリーし続けている場合。ブローカーのサーバーが不安定になっている場合。

ただし「なんとなく怖いから止める」という感情的な判断は避けてください。ショック相場の最中にEAを止めると、その後の回復局面を取り逃がすことになります。

EAを止めるタイミングの判断基準についてはこちらで解説しています。

まとめ

ショック相場でEAに起きることをまとめます。

スプレッドの急拡大・スリッページの発生・ロジックが機能しない局面の発生という3つの問題が起きやすくなります。

しかしショック相場はEAだけの問題ではありません。裁量トレードでも同様のリスクがあり、EAは感情的なパニック売買を防ぐという点では優位性があります。

GENESIS・凜・AXISの開発でショック相場期間のバックテストを確認してきた経験から言えるのは、「ショック相場でDDが出ることより、ショック相場後に回復できるロジックかどうかの方が重要」ということです。

ショック相場を想定内にするための設計、適切な資金管理、ポートフォリオによる分散。この3つがEA運用でショック相場を乗り越えるための核心です。

上部へスクロール